慰安旅行の悲劇





1881 :2006/01/14(土) 18:05:41 ID:qT6E39+9
13機関の慰安旅行でのことだった。
俺たちは一路目的地をめざしてバスに乗り込んだ。
席も隣同士だった。少しテンションの高すぎる彼に閉口しながらも、バスの旅は快調に進んで行った・・・。

しかし、バスに乗って1時間が過ぎた頃には、サイクスはさっきまでのテンションがウソだったかのように静かになり、何か神妙な顔つきになっていた。
「車酔いか?」
俺は聞いてみた。
「ああ、少し酔ったようだ。」
「ゼムナスに言おうか?」
「いや、大丈夫だ、言わないでくれ」
「そうか、また気分悪くなったら言えよ。」
「ああ。」
まぁ彼が大丈夫だと言うのだから、それ以上のしようはない。
俺も彼の車酔いにつきあって、せっかくの楽しい慰安旅行をだいなしにするつもりは毛頭なく、彼を放って友人らとの会話を楽しんでいた。

1892 :2006/01/14(土) 18:06:25 ID:qT6E39+9
「ゼムナス、ヴィクセンが気分悪いって」
突然後方のオッサン組の席からゲロ警告がゼムナスに報告された。
警告されたところで、ゼムナスにできるのは「だぁいじょうぅぶかぁああ」とのお決まりのセリフとゲロ袋を装着したダスクを渡すことぐらいだ。

特技が『貰いゲロ』の俺としては、非常に忌々しき事態である。
隣のサイクスも加わって『連鎖ゲロ』という非常事態に突入する危険性もはらんでいた。

しかし、ヴィクセンはヴィクセンにしては車酔いに耐えてよく頑張った!俺は感動した!
かくして非常事態は去ったかに思えた…。

バスは予定通りに快調に進み、ハイウェイへと突入した。
ハイウェイはカーブも信号も無いので、酔いが悪化することは無い。
俺は安堵し、また友人らとのバカ話に花を咲かせていた。
その時俺の隣のサイクス爆弾がポツリと火花をあげた

「・・・バーサカーしたい。」

1903 :2006/01/14(土) 18:07:12 ID:qT6E39+9
・・・車酔いではなかったのだ。彼は一心不乱に、今にも顔の筋肉の束縛を振り切って生まれ落ちんとする『高笑い』との熱いバトルを孤独に繰り広げていたのである。
しかし、そんなことを告白されても俺にはどうしようもなかった。
勿論バスにはバーサカー出来るスペースは無かったし、ハイウェイに乗ったばかりで次のパーキングエリアはまだまだ先だったからだ。
「やばい?ゼムナスに言おうか?」
「いや、言わないでくれ。」
蚊の消え入るような声で彼はよわよわしく訴えた。

そうなのだ。この閉鎖された空間で『バーサク』という行為は、イスラム教徒が豚を食うに等しいタブーだったのだ。
しかし、彼の様子を見ていると、そんな事を言っている場合ではなさそうなのがわかった。

「このままでは『根暗マン』が『基地外マン』にクラスアップしていくだけだ!」

そう考えた俺は、彼の抑止を振り切り、ゼムナスに
「サイクス君がバーサカーしたいって言ってます。」と伝えた。
わざわざゼムナスに接近して、小声で伝えたのは俺なりの彼の名誉への気遣いであった。

1914 :2006/01/14(土) 18:07:50 ID:qT6E39+9
しかし、ゼムナスはそんな俺の気遣いに気付かず

「サイクスぅ・・・ガぁマンできるかああぁ・・・」
とバス中に響き渡る低音ボイスで彼に問い掛けた。
サイクスの恨みがましい視線が俺に突き刺さる。

一瞬で車内には静寂が訪れ、皆の注意は『バーサカーがもれそうなサイクス』に集まっ
た。

ゼムナスが彼の隣の席へと移動したので、隣だった俺はゼムナスの席へと移動が出来だ。

「爆心地は避けれた!やった!」

不謹慎だが俺のその時の素直な心境はそうだ。

最早俺に出来ることは祈るだけだったが、
「サイクスがバーサカーをガマンできますように」
なんて祈ったらキングダムハーツの神様に怒られそうだったのでやめた。
大人しく事の成り行きを見守ることにした。


1925 :2006/01/14(土) 18:08:41 ID:qT6E39+9
    ゼムナスは「ガぁマンできるぅのかぁあ・・・でぇぇきぃなぁいのかぁぁぁ・・・」とまだ問うていた。サイクスは半泣き状態で答えようとしない。
俺は考えていた。もし「もうガマンできません」と彼が答えたらゼムナスはどうするのだろうかと。
人生経験の浅い俺の出したベストの答えは『バスを停車して道の端でバーサカーする』というものだ。
それ以外に考え付かなかったという事もあるが。
真アンセムでもそう答えるであろうベストの回答を、もしその時が来ればゼムナスも選択するだろうと思っていた・・・。

Time is come---そして時は来たれり

ゼムナスの「ガぁマンできるぅのかぁあ・・・」の問いに遂に彼が首を横に振った。

『WARNING WARNING 爆発秒読み開始 乗組員はすみやかに退避せよ』
緊急コールが脳内に鳴り響く。

しかし俺たちには逃げ場は無かった。

モーゼにすがる民草のように我々はゼムナスの決断を待った。
モーゼの口から決断の言葉が吐かれる

「サぁイクスは一番前の席へぇぇ・・・前の席の人達は後ろの座席へ下ぁがぁぁれぇぇえ・・・」

意外なモーゼの言葉に俺は呆然とした。席を移動して何の解決になるのだろうかと。
しかしその疑問はモーゼの手にしたものによって一瞬で掻き消えた。

モーゼの手にあったもの・・・それは

『ダスク』
1946 :2006/01/14(土) 18:10:20 ID:qT6E39+9
そう、『ゲロダスク』として搭載されていたあのダスクである。
流石にモーゼがそのダスクを何に使用せんとしているかは理解できた。

モーゼは海を割る変わりに『ゲロダスク』を『八つ当たり用ダスク』へと変身させようとしているのだと。
モーゼの導きにより、民族大移動は終了した。

しかし、それで終わりではない、いや、地獄はこれからなのだ。
皆が顔を見合わせる。何を喋ればいいのかわからない。
来るべき地獄の時を皆が、最大級の静寂という最悪の状況で迎えようとしたいた。

「フフッ」

静寂の車内についにサタンが産声を上げた。サタンは笑い声をあげていた。

「フハハハハ! フハハハハハハハ!!フハハハ!!フハ!フハハハハ!!

 消えろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

サタンがあらん限りの雄たけびをあげた!!
雄たけびと共に、車内に青い光が蔓延する!!

この極限の状況に耐えられず、アクセルのボケとデミックスのバカが笑い声を上げはじめた!
するとそれにつられてガマンしていた者達も一斉に大笑いを始めた。

「おぉおおおぉぉおお!!! 邪魔だああああハハああああハッあああああハッハッ!!

 ワハハハ消えろおおハハッハッハおおおおおおハハハーーーーハハハおおお!!!」

サタンの雄たけびと攻撃と子羊達の笑い声で車内は更なる地獄へと変わった。

1957 :2006/01/14(土) 18:10:57 ID:qT6E39+9
その瘴気に当てられたのは、車に酔っていたヴィクセンだった。
頼みの綱のゲロダスクは既にバス前方でサイクスの激しい暴力により八つ当たり用ダスクへとクラスチェンジしていた。

耐え切れなくなったヴァクセンの口から溶解液が勢いよく放たれた。前門の狼、後門の虎とはよく言うが、『前門のバーサカー、後門のゲロヴィクセン』とは古代中国の文人も考えもしなかったであろう。

車内はサイクスの攻撃の余波とゲロの悪臭が入り混じり、サイクスから放たれる雄叫びと気の触れんばかりの爆笑がうずまき、泣き出すレクセウスや貰いゲロをするマールーシャも現れた。

「フゲロオエップ″ 消えろおおおプッおおおハハおおハッおおおおおハッハッ!!

 ワハハハゲェェッハハゲロゲロハおおおおおハハハ  ゲロ

 邪魔だああワハハハゲロゲオあああああああ  ゲロオペッハハハハエーン   

 ワハハハおおおおおおハシクシクハッハッハおおおハゲロッロロハハーーーーハハハおおお!!」

 発狂、嘔吐、嗚咽、爆笑、激臭を乗せた地獄のバスは速度を緩めることなく目的地の草津温泉へと向かった。

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